第121章 仲睦まじい夫婦という偽り

長谷川栞は周囲のひそひそ話など意に介さず、涼しい顔でチームの面々を連れて壇上へ上がった。

「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。ザ・ワンデザイン代表の長谷川栞です。本日の展示会にお越しいただけたこと、心より感謝申し上げます……」

そう口にしながら、彼女は観客へ向けて小さく一礼する。そこから先も言葉は多くない。けれど一つひとつが芯を射ていて、短いスピーチが終わるころには、会場は自然と拍手に包まれていた。

ただ――いちばん大きな拍手は、入口のほうから聞こえた。

長谷川栞は反射的に顔を上げる。

そこにいたのは、招待状も出していないはずの中野航平だった。息子の中野蓮の手を引き、穏...

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